Q. なぜ不動産会社は土地契約を急がせるのか?
A. 本当に他の購入希望者がいる場合もありますが、仲介手数料は売買契約が成立しなければ得られず、検討期間が長いほど他社へ流れる可能性も高くなるからです。
「今日中に決めないと売れます」
「ほかにも検討している人がいます」
「とりあえず申込書だけ書きましょう」
土地探しでは、このように契約や購入申込みを急かされることがあります。
人気の土地に複数の購入希望者がいることは、実際にあります。すべてが不当な営業とは限りません。
しかし、土地は数百万円から数千万円の買い物です。
急かされたことを理由に、建築可能性、災害リスク、造成費、住宅ローンを確認せず契約してはいけません。
急がせる6つの理由
1.本当に他の購入希望者がいる
価格、立地、形状のよい土地には、複数の購入希望者が集まります。
特に次の土地は動きが早くなる場合があります。
- 人気の学校区
- 相場より安い
- 形が整っている
- 上下水道が整備済み
- 道路との高低差が少ない
- 日当たりがよい
- 主要道路や商業施設に近い
- 災害リスクが比較的低い
この場合、不動産会社が「ほかにも検討者がいる」と伝えるのは、事実の共有です。
ただし、「問い合わせがあった」「見学者がいる」「購入申込みが入っている」は意味が違います。
確認するのは次の内容です。
- 問い合わせ段階か
- 現地見学済みか
- 購入申込書が提出されているか
- 売主が契約相手を決めたか
- 契約予定日は決まっているか
他の希望者の個人情報は開示できませんが、現在の販売状況は確認できます。
2.仲介手数料は契約成立によって発生する
不動産仲介会社の報酬は、原則として売買契約が成立したときに発生する成功報酬です。
検討中のままでは、仲介会社の売上にはなりません。
購入者が時間をかけている間に、別の土地を選んだり、別の不動産会社で契約したりする可能性もあります。
そのため、営業担当者には、できるだけ早く購入申込みや契約へ進めたい動機があります。
これは事業として自然な面もあります。
しかし、営業担当者の売上時期と、家族の土地購入の安全性は別です。
不動産会社の都合で、確認作業を省略してはいけません。
3.売主が早く売りたい
売主側にも、早期売却を希望する事情があります。
- 相続税や固定資産税
- 住宅ローン返済
- 住み替え資金
- 相続人間の分配
- 決算時期
- 管理負担
- 離婚・転勤
- ほかの購入計画
売主から「今月中に契約したい」と依頼されていれば、不動産会社も契約を急ぎます。
ただし、売主の事情によって買主が必要な調査を省く必要はありません。
調査する時間が認められないなら、その土地を見送ることも判断の一つです。
4.時間をかけると土地の問題が見つかる
これは、すべての不動産会社に当てはまる話ではありません。
しかし、十分に調査すると、土地広告だけでは分からない問題が見つかる場合があります。
- 擁壁のやり直しが必要
- 上下水道の引込みがない
- 道路後退が必要
- 境界が確定していない
- 古家の解体費が高い
- 地中埋設物がある
- 地盤が軟弱
- 洪水・液状化リスクがある
- 希望の建物が配置できない
- 農地転用や開発許可が必要
- 接道条件に問題がある
問題が判明すれば、購入者は価格交渉や購入中止を検討します。
説明を曖昧にしたまま「人気だから先に契約しましょう」と急かす会社には注意が必要です。
5.「失う恐怖」で決断させやすい
人は、得をすることより、目の前のものを失うことへ強く反応する傾向があります。
「この土地を逃したら、もう同じ土地は出ません」と言われると、冷静な比較より損失回避が優先されます。
その結果、次のような判断をしやすくなります。
- 予算を超えて購入する
- ハザードマップを確認しない
- 住宅会社へ相談しない
- 希望の家が入るか確認しない
- ローン特約を十分に読まない
- 家族が納得しないまま申し込む
土地は同じ場所に一つしかありません。
だからこそ、希少性を使った営業が効果を持ちます。
しかし、一つの土地を逃す損失より、問題のある土地を買う損失の方が大きくなる場合があります。
6.申込書を出すと心理的に断りにくくなる
購入申込書や買付証明書は、購入条件と意思を売主へ伝える書類です。
一般に、売買契約そのものとは異なります。
しかし、一度署名すると「ここまで進めたのだから」と感じ、問題が見つかっても断りにくくなります。
購入申込みを出す前に、少なくとも次の条件を記載・確認します。
- 購入希望価格
- 契約予定日
- 手付金
- 住宅ローン利用
- 融資承認期限
- 建築条件の有無
- 境界・測量
- 解体・残置物
- 引渡し条件
- 有効期限
申込書へ署名する前に、写しを受け取り、どのような意味を持つ書類か説明してもらいます。
「申込金」と「手付金」は違う
| お金 | 主な支払時期 | 主な意味 |
|---|---|---|
| 申込金・申込証拠金 | 売買契約前 | 購入意思を示す預り金 |
| 手付金 | 売買契約時 | 契約成立の証し・解除条件に関係 |
契約前の申込金は、契約に至らなかった場合、原則として返還される性質のものです。不動産保証協会も、申込金は預り金であり、契約前にキャンセルした場合は返還されるべきと案内しています。全国不動産保証協会「不動産取引に関するお金の知識」
一方、売買契約時の手付金は意味が異なります。
契約後に買主都合で解除すると、手付金を失う場合があります。履行着手後や手付解除期限後には、違約金が関係する可能性もあります。
「とりあえずお金を入れれば土地を押さえられる」という説明だけで支払わず、領収書、預り証、返還条件を確認します。
不動産売買は簡単にクーリングオフできない
不動産売買契約は、一般的な買い物のように、契約後いつでも無条件で撤回できるわけではありません。
宅地建物取引業法上のクーリングオフは、主に次のような限定された条件に関係します。
- 売主が宅地建物取引業者
- 買主が宅地建物取引業者ではない
- 宅建業者の事務所等以外で申込み・契約
- 所定期間内
- 引渡し・代金全額支払い前
個人が売主で、不動産会社が仲介する土地や、宅建業者の事務所で契約した場合などは、対象にならないことがあります。大阪府「宅地建物売買のクーリングオフ」
「後でキャンセルすればよい」と考えて契約してはいけません。
急いで買うと発生しやすい追加費用
土地価格1,000万円だけを見て購入しても、次の費用が後から判明する場合があります。
| 追加工事の例 | 概算例 |
|---|---|
| 解体・残置物撤去 | 200万円 |
| 地盤改良 | 100万円 |
| 上下水道引込み | 150万円 |
| 擁壁・造成 | 300万円 |
| 測量・境界確定 | 50万円 |
| 合計 | 800万円 |
金額は土地条件や工事内容によって大きく変わります。
それでも、1,000万円の土地が、建築できる状態にするまで1,800万円になる可能性があります。
相場より200万円安い土地でも、追加工事が800万円なら安い土地ではありません。
契約前に住宅会社へ確認する
土地は、不動産会社だけで判断しないことが重要です。
不動産会社は土地取引の専門家ですが、希望する建物の設計と建築費まで確定する立場とは限りません。
契約前に住宅会社へ次の内容を確認してもらいます。
- 希望する建物を配置できるか
- 駐車台数を確保できるか
- 建ぺい率・容積率
- 接道・道路後退
- 高さ・斜線・地区計画
- 給排水・電気
- 擁壁・造成
- 地盤改良の可能性
- 外構費
- ハザードマップ
- 土地と建物を含む総額
平屋を希望しているのに、建物と駐車場が入らない土地を契約すれば、2階建てへ変更するか、別の土地を探すことになります。
土地契約前に、建物配置図と概算総額を出します。
住宅ローン特約を確認する
住宅ローンを利用する場合、売買契約書のローン特約を確認します。
- 利用予定の金融機関
- 借入予定額
- 金利・返済期間
- 融資承認期限
- 契約解除期限
- 融資否決時の手付金返還
- 買主が行う手続き
- 一部減額承認の場合の扱い
「ローンが通らなければ白紙になります」という口頭説明だけでは不十分です。
契約書の条文で確認します。
また、土地のローンが通っても、土地と建物の総額を安全に返せるとは限りません。
良い不動産会社と危険な会社の違い
良い不動産会社
- 他の検討者の状況を可能な範囲で説明する
- 急ぐ理由を具体的に説明する
- 重要事項説明書を事前に見せる
- 調査時間を設ける
- デメリットも説明する
- 住宅会社の確認を認める
- 申込金・手付金の違いを説明する
- 返還・解除条件を書面で示す
注意したい会社
- 「今日だけ」を繰り返す
- 理由を説明せず契約を迫る
- 重要事項説明書を契約当日に初めて見せる
- 建物配置を確認させない
- ハザードリスクを軽く扱う
- 口頭説明だけで申込金を求める
- ローン特約を曖昧にする
- 家族や専門家への相談を嫌がる
本当に他の申込みが入っている場合でも、調査資料と契約条件を確認する時間は必要です。
契約前に確認する12項目
- 売主は個人か宅建業者か
- 他の購入希望者はどの段階か
- 希望する建物を配置できるか
- 接道・道路後退に問題はないか
- 上下水道の引込みはあるか
- 境界は確定しているか
- 擁壁・造成費はいくらか
- 解体・残置物撤去は誰が負担するか
- 洪水・土砂災害・液状化リスクはどうか
- 土地と建物の総額はいくらか
- ローン特約の期限と条件は何か
- 契約解除時の手付金・違約金はどうなるか
一つでも不明なら、契約前に書面で回答してもらいます。
俺流結論
不動産会社が急がせる理由には、本当に他の購入希望者がいる場合と、営業上早く契約したい場合があります。
どちらであっても、お客様が調査を省略してよい理由にはなりません。
私なら、「ほかの人に売れるかもしれない」という恐怖より、問題のある土地を買い、数百万円の追加費用を背負う危険を重く見ます。
土地は、先に契約してから家を考えるのではありません。
住宅会社に建物配置、法規制、造成、上下水道、地盤、ハザードマップを確認してもらい、住み始めるまでの総額を出してから決めます。
良い土地を逃す後悔は時間とともに薄れます。
しかし、建てたい家が建たない土地や、返せない総額の土地を買った後悔は、住宅ローンが終わるまで続きます。
急がされたときほど、契約ではなく確認を急ぐ。
これが土地購入で失敗しない基本です。










