お客様からの質問です。
住宅ローンを組んだところ、35年返済で 完済が「70歳」を過ぎることになってしまいます。 それで家を購入することは大丈夫なのか・・・・ 不安です。 年金生活になっても払い続ける人は多いのでしょうか? 以下、放送原稿、
家を購入しようと住宅ローンを組むとき、返済期間が長期にわたることは珍しくありません。特に35年ローンでは、完済年齢が70歳を超えてしまうケースも多いです。実際、住宅金融支援機構などの統計を見ると、ローンを組む人の平均年齢は30代半ば~40代前半であり、完済年齢が65歳以上になる人も相当数います。
ですので、70歳を過ぎても返済が続くこと自体はめずらしくありませんし、それだけを理由に「家を買わない方がいい」とは一概に言えません。ただし、ここで大事なのは「完済年齢そのもの」よりも、「老後の収入や生活費に無理が出ないかどうか」です。
多くの人は、現役時代の収入を前提に返済計画を立てています。しかし、退職後は収入が減り、年金が主な収入源になります。年金だけでローンを払う方も一定数おられますが、やはり負担感が大きくなることが多いのが実情です。
たとえば、年金の支給額は人それぞれですが、平均的な厚生年金の夫婦世帯で月額約20万円前後が目安です(※収入や加入期間により異なります)。そこから生活費や医療費を捻出し、さらにローン返済を続けるとなると、毎月のやりくりは厳しくなるケースも少なくありません。
では、実際に70歳を過ぎても返済している人はどうしているかというと、大きく分けて3つの備えをしています。
- 繰上返済を計画的に行う
収入があるうちに繰上返済を少しずつ進めておくことで、定年時に残債を減らし、返済負担を軽くするやり方です。たとえ一括返済は無理でも、少しずつ返済期間を短縮できます。 - 退職金や貯蓄で一部完済する
退職金の一部を充当し、残りを年金で返済するケースも多いです。退職金をあてにしすぎると老後資金が減るリスクもあるので、慎重に計画する必要があります。 - 年金収入で無理なく返せる返済額に設定しておく
毎月の返済額を、老後の収入でも無理のない金額に抑えるよう、ローン金額を抑えたり、頭金を多めに用意したりして調整しています。
不安に思われているように、老後の住宅ローンは心理的にも経済的にも負担です。けれど、逆に言えば、老後の生活資金とのバランスをきちんと計画しておけば、完済年齢が70歳を過ぎても問題ない場合も多いのです。
もしこれから契約前であれば、以下のポイントを検討すると安心です。
- 毎月返済額を「手取り月収の25%程度以内」に抑える
- 退職までに完済、もしくは残債を少なくできる返済計画を立てる
- 団体信用生命保険(団信)や収入保障保険に加入し、万一の備えも確保する
- 変動金利で借りる場合は、将来的な金利上昇も考慮する
- 万一に備えた生活防衛資金(生活費6~12か月分)を確保する
住宅ローンは「今払えるか」だけでなく、「将来も安心して払えるか」がとても大事です。不安があるのは当然で、多くの方が同じように悩んでいます。将来のライフプランや収支シミュレーションを金融機関やFP(ファイナンシャルプランナー)に相談しながら、安心できる計画を立てることをおすすめします。
もしよければ、今の年齢や収入、退職予定時期、貯蓄状況をもとに、具体的なシミュレーションも一緒に考えますので教えてください。将来の見通しを数字で確認することで、不安が和らぐと思います。
「70歳前に住宅ローンを完済する人の割合」について、参考になるデータをお伝えします。
**住宅金融支援機構の調査(「住宅ローン利用者の実態調査」など)**をもとにすると、おおむね以下の傾向があります(数字は概算の目安です):
▇60歳(定年頃)までに完済する人
→ おおよそ全体の3~4割程度
(早期繰上返済をして完済する人、借入時に期間を短く設定した人)
▇ 60代のうちに完済する人
→ 約3割程度
(退職金や貯蓄で残債をまとめて返すケースが多い)
▇ 70歳以降も返済が続く人
→ おおよそ3割程度
つまり、完済時期で見るとおおむね70歳前に完済する人は全体の6~7割程度です。
逆にいうと、約3割は70歳を過ぎても返済を継続しています。
特に最近は住宅ローン控除をフルに活かすために「長期で借りる→途中で繰上返済する」という組み方をする方も多いです。最初から短い期間で組むよりも月々の負担を抑えられるため、退職後も一部返済が残る人が一定数いるのが実情です。
なお、金融機関によっては「完済時年齢80歳までOK」とするところもありますので、「70歳を超える返済=めずらしい」ということではありません。
ポイント
- 70歳前に完済する人が過半数ではあるものの、3人に1人は老後も返済している。
- 年金で返済を続ける人もいるが、退職金や貯蓄で一括繰上返済する人が多い。
- 老後の家計の余裕を重視して、なるべく退職前に残債を減らす工夫をするケースが多い。