高断熱なのに夏暑い家になる理由 窓と日射遮蔽で防ぐ山梨の家づくりの後悔
執筆 デザインハウス甲府株式会社 代表 深澤敏仁
高断熱住宅でも、窓から入る日射が多く、冷房・除湿が追いつかなければ夏は暑くなります。対策は、窓の方位と面積、日射を遮る位置、冷房計画を一緒に確認すること。「断熱等級6だから夏も安心」という説明だけでは、家づくりの判断材料が足りません。
大きな窓のある、明るいリビング。完成写真では魅力的です。しかし、夏の午後はカーテンを閉めっぱなし。エアコンの設定温度を下げても、窓際のソファが暑い。そんな暮らしになれば、何のための大開口だったのでしょうか。
窓には採光、眺望、通風という役割があります。その窓を暑さのために使えなくするのは、暮らしの損失です。窓の購入費だけを払うのではありません。そこから見える景色や、家族が過ごす時間にもお金を払っています。完成写真の明るさを、そのまま住み心地の評価にしてはいけません。
当社制作の動画「知らないと損する住宅性能 第10話 高断熱なのに夏暑い 窓と日射の落とし穴」をもとに、山梨で新築・建て替えをする前に確かめたい内容を掘り下げます。
高断熱なのに夏暑くなる仕組み
断熱は、壁や屋根、窓などを通る熱の移動を抑える技術です。冷房で冷やした室内を保つためにも役立ちます。ただし、断熱材そのものが室内の熱を取り除くわけではありません。窓から入る太陽の熱、人や家電・調理で発生する熱は、冷房などで処理する必要があります。
日射を多く取り込み、室内で熱を発生させれば、高断熱の家でも室温は上がります。外気が涼しくなった後も、室内にたまった熱が残ることがあります。「高断熱だから暑い」と断定せず、どこから熱が入り、どう排出しているかを調べることが先です。

図1 断熱 日射遮蔽 冷房と除湿はそれぞれ役割が異なります
断熱等級とUA値だけでは部屋の暑さは分からない
UA値は、建物の外皮を通る熱の伝わりやすさを表します。数値が小さいほど断熱性能が高い指標です。一方、冷房期の日射の入りやすさを見る指標がηAC値です。国の断熱等性能等級も、地域に応じてUA値とηAC値などで評価されます。「等級には日射の評価がない」という説明も正確ではありません。[1][2]
ただし、建物全体の等級や平均値だけで、西側の寝室が夕方にどうなるかまでは分かりません。部屋別の日射、窓の配置、冷房の届き方、使う時間帯まで確認して初めて、暮らしの暑さに踏み込めます。
例えば、似たUA値の家でも、西側に大きなガラス面を持つ間取りと、東西の窓を絞った間取りでは、日射による負担が違います。さらに、同じ家の中でも窓際と奥の部屋では条件が異なります。数値の良さを比べると同時に、その数値がどの部屋の快適さを説明しているかを確かめましょう。
| 指標 | 何を見るか | 確認する資料 |
| UA値 | 建物全体の断熱性能 | 外皮計算書 |
| ηAC値 | 建物全体の冷房期の日射取得 | 外皮計算書 |
| 窓の日射熱取得率 | その窓の太陽熱の入りやすさ | 窓仕様書 |
| C値 | 建物の隙間の程度 | 気密測定報告書 |
C値は気密性能の指標で、日射遮蔽の指標ではありません。小さなC値を示されても、西窓から入る太陽の熱への対策は別に確認してください。
南の大きな窓と西の大きな窓を同じ扱いにしない
南側は、夏の高い位置からの日差しを軒や庇で遮り、冬の低い日差しを取り込む設計を検討できます。ただし「軒が付いているから大丈夫」では不十分です。出幅、窓の高さ、壁からの距離、実際の方位によって影の位置は変わります。
西側は、低い角度の日差しが窓に届きやすく、上にある軒だけでは遮りにくい場面があります。夕方に過ごすリビングや、就寝前の寝室に大きな西窓を設けるなら、外付け日よけ、窓面積、ガラスの仕様をセットで考える必要があります。東側の朝日も同様に確認します。[3]

図2 方位に合った日よけを選びます 軒の出幅は個別に検討が必要です
西に眺望があるなら、窓を諦める必要はありません。景色を楽しむ位置を絞り、外付け日よけを使う。隣の窓と高さを変える。目的を残しながら、熱の入口を調整する方法があります。窓の枚数や大きさを決める前に「誰が、何時に、そこで何をするか」を設計者と共有してください。
隣家が日よけになっている敷地もありますが、現在の影が将来も続くとは限りません。空き地に建物が建つ場合だけでなく、隣家の解体で日射が増える場合もあります。敷地の外の条件に頼る部分と、自分の家で対策する部分を整理しておくと、長く使える計画になります。
カーテンを閉めれば解決という説明を疑う
室内カーテンにも、光や日射熱を抑える効果はあります。しかし、ガラスを通過した日射を室内側で受けるため、カーテンが吸収した熱の一部は室内にも伝わります。外付けシェードやブラインドは、窓へ届く日射を屋外で減らせる点が違います。[4]

図3 まぶしさ対策と暑さ対策を分けて考えます
外付けなら何でもよいわけでもありません。風の強い日に収納できるか、毎朝操作できるか、掃き出し窓の出入りを妨げないか。建て替えでは、将来も無理なく扱える操作方法を選ぶことが大切です。取り付け下地、固定位置、風への対応、交換費用まで打ち合わせましょう。
また、日差しを遮り過ぎて昼間から照明が必要になったり、見たい景色が隠れたりすれば、不満が残ります。外付けブラインドの羽根の角度、シェードの透け方、必要な時間だけ閉める運用まで比較してください。暑さ、明るさ、視線、景色のうち、何を優先するかで適した方法は変わります。
トリプルガラスでも日射の確認は必要
ペアかトリプルかという枚数だけでは、夏の遮熱性能は決まりません。同じLow-Eガラスでも、製品や構成によって断熱性能と日射熱取得率は異なります。断熱性能を示す熱貫流率と、日射熱の入りやすさを示す取得率を、窓全体の値で確認してください。ガラスだけの数値とは区別が必要です。
例えば、窓面積4㎡、窓面の日射強度500W/㎡という同じ条件を仮定します。窓全体の日射熱取得率が0.50なら、入る熱は4×500×0.50=1,000W。0.30なら600Wです。この簡易計算では400Wの差が出ます。

図4 仮定条件による比較です 冷房の消費電力や電気代を示す数値ではありません
実際には日射の強さ、入射角、軒や周辺建物の影などで変化します。取得率を下げれば冬の日射取得も減り得るため、全ての窓を一律に遮蔽型にするのではなく、方位ごとの検討が必要です。南側は冬の日射を生かし、夏は可動式の日よけで遮る選択もあります。
山梨では冬の日射も生かして年間で判断する
甲府地方気象台によると、甲府盆地や八ヶ岳山麓には年間日照時間の平年値が2,200時間を超える場所があります。冬に暖かさを得られる日差しが、夏には冷房の負担にもなります。[5]
ただし、甲府盆地と富士五湖周辺、八ヶ岳山麓を同じ条件で設計することはできません。標高、周囲の山や建物、敷地の向きが違うからです。「山梨仕様」という言葉だけで済ませず、その土地で夏と冬の日射がどう変わるかを確認してください。
日照時間は、特定の窓に当たる日射量そのものではありません。地域の晴れやすさを知る資料として使い、窓の設計では方位と影を別に検討します。冬に無料で得られる太陽熱をどれだけ生かせるか、夏に必要なときだけ遮れるか。この両方を検討することに、設計の価値があります。
冷房を置くだけで全ての部屋が冷えるわけではない
日射を減らした後は、熱を処理する冷房計画です。リビングに冷房能力があっても、ドアを閉めた寝室まで同じように冷えるとは限りません。吹き出し口からの風の経路、戻る空気の経路、部屋を使う時間を確認します。吹き抜けや廊下を介して冷やす計画なら、その条件を図面で説明してもらいましょう。
冷房は室温を下げることに加え、湿気の処理も担います。設定温度だけを下げても不快感が残るなら、湿度や運転方法も点検が必要です。「高気密だから窓を開ければよい」と片付けず、外の温湿度が高い時間帯の開放も含めて考えます。夜間の窓開けも、外気の状態や防犯などの条件に合わせた判断です。
契約前に図面と見積もりで確認する5項目
営業担当者には、こう聞いてください。「この間取りの西窓は、真夏の午後にどう日差しを防ぎますか。図面と仕様で説明してください」。性能カタログから、あなたの家の設計へ話を進める質問です。
1 方位と窓面積 平面図に方位を示し、東西の大きな窓と、長く過ごす部屋の位置を確認する。
2 軒と影の位置 立面図や断面図で、夏と冬にどこまで日差しが入るかを確認する。
3 窓の仕様 品番、窓全体の熱貫流率と日射熱取得率、外付け日よけの有無を確認する。
4 冷房と除湿 部屋別の冷房負荷、機器の能力、風の通り道、閉め切った寝室への対応を確認する。
5 総額と維持費 日よけ本体、下地、施工、電動化、交換費用がどこまで見積もりに含まれるかを確認する。
エアコンを大型化するだけで済ませる前に、窓から入る熱を減らせないか検討しましょう。また、熱交換換気があっても、機種や運転条件によって働きは異なり、換気だけで室内の熱と湿気を全て処理できるとは限りません。
住み始めてからの対策は、取付場所や外観の制約が増えることがあります。安い本体価格だけで比較せず、日射対策と必要な冷房まで含めた総額を比べる。それが、見積もり段階で防げる後悔です。
比較する際は、A社にもB社にも同じ方位の窓、同じ日よけ範囲、同じ冷房対象室を示します。一方が日よけ込み、もう一方が入居後に追加する前提なら、提示価格だけでは比較できません。初期費用と、日々の操作・掃除・交換という維持の負担を並べて判断してください。
高断熱住宅の夏の暑さについてよくある質問
断熱等級6なら夏はエアコンなしで暮らせますか
等級だけで判断できません。日射、外気温、室内の発熱、湿度などで必要な冷房は変わります。高断熱は冷房を効かせる土台であり、無冷房を保証する性能ではありません。
西側に窓を設けてはいけませんか
必要な眺望や採光を整理し、面積とガラス、外付け日よけを検討すれば設けられます。窓をなくすことを先に決めず、使う時間帯を含めて判断します。
南側は遮熱ガラスにすれば安心ですか
冬の日射取得が減る場合もあります。冬の暖房負担と夏の冷房負担を併せて比較し、軒や可動式日よけとの組み合わせを決めます。
すでに住んでいる家が暑い場合は何から確認しますか
暑くなる時間と部屋、窓の向き、室温と湿度を記録します。そのうえで日射対策、冷房の能力と運転、屋根や天井の断熱などを順に点検します。窓だけが原因とは限りません。
窓の日射対策まで説明できる住宅会社を選ぶ
「高性能です」で説明を終える会社と、あなたの図面で夏の午後を説明する会社。比較すべきなのは、そこです。大きな窓があることと、その前で気持ちよく過ごせることを一緒に確かめてください。
デザインハウス甲府では、性能と価格を一緒に比較できるよう、住宅の販売価格実例や住まいのQ&Aを公開しています。検討の際は、断熱性能に加えて、窓の日射対策と必要な工事を含む総額も確認してください。
新築・建て替えの相談は、当社のお問い合わせページから。LINEでは「夏の日射対策を相談したい」とお送りください。敷地の方位、検討中の間取り、気になる部屋を整理しておくと、相談が具体的に進みます。
参考資料
[2] 国土技術政策総合研究所 住宅を選定する時に候補となる住宅の基本性能
[3] LIXIL 猛暑の減災 方角に合わせた窓の日差し対策
[4] LIXIL スタイルシェード エコロジー 日差し対策










