Q 営業はできると言い、職人は難しいと言います。
A|結論
どちらかをすぐ正しいと決めず、同じ図面・仕様・工事段階を前提に話しているかを確認します。営業、設計、現場責任者が情報をそろえ、できる条件、追加費用、工期、契約との関係を会社として回答する形にしてください。施主が職人へ直接指示してつじつまを合わせると、記録に残らない変更や責任の混乱につながりかねません。
1|「できる」の意味を分ける
技術的に施工できる、現在の構造や配管でできる、契約金額内でできる、予定日までにできることは同じではありません。営業は一般的な施工可能性を話し、職人は現在の現場条件では難しいと話しているのかもしれません。一つの言葉へ異なる意味が重なっていないかを整理します。
例えば棚を移したい場合でも、下地の有無、壁内の配線、取付ける物の荷重、仕上げ済みかどうかで条件が変わります。「棚を少し動かすだけ」と見えても、関連作業は別にあります。最初の質問を具体的な位置、寸法、使い方へ変えて、会社へ回答を求めます。
2|図面の版と日付をそろえる
営業が最新版の図面を見ていても、現場へ古い図面が渡っている可能性があります。逆に、施主が見ているのが検討途中の案かもしれません。図面番号、更新日、承認日、変更箇所をそろえ、どの図面で施工するかを確認してください。
写真やメッセージを送る場合も、場所と図面上の位置を添えます。「ここを変えて」という一枚の写真だけでは、左右や高さ、工事範囲を誤解しやすくなります。話が食い違った順番も記録し、誰かを責める材料ではなく、前提をそろえる材料として使います。
3|会社の回答窓口を決める
現場監督や担当責任者へ、関係する営業と設計を含めた回答を依頼します。施主が三人へ別々に聞き、答えを伝言する形を続けないことです。会社内で調整した結論とその根拠を、一つの窓口から返してもらいます。担当者が不在の場合の代行も決めます。
工事を設計図書へ照合・確認する工事監理の役割も、必要に応じて確認します。国土交通省は工事監理の内容・方法を個別工事に即して合理的に決めることを示しています。営業の判断だけで技術的な条件を変更せず、責任を持つ設計・監理の確認につなげます。[R13]
4|三つのケースとして整理する
第一は、説明だけの行き違いです。同じ希望でも、位置や寸法、時期が違って伝わっていた場合は、条件をそろえれば解決する可能性があります。説明の修正を記録し、図面へ反映して終えます。誰が悪いかを決めることより、再発しない情報の渡し方が必要です。
第二は、契約上予定されていた内容が現場で成立していないケースです。なぜできないのか、契約と設計のどこへ影響するかを会社へ確認します。代替案だけを急いで承認せず、元の約束、費用、品質、工期を含めて扱います。必要なら独立した専門家へ相談します。[R01][R17]
第三は、施主が新たに希望した変更で、現場の段階では追加作業が必要なケースです。変更を否定する必要はありませんが、関連する工事と価格、延期の理由を説明してもらいます。変更合意を残すことが、後の精算の認識違いを減らします。[R02]
5|選択肢は、元の案・代替案・保留の三つ
第一案は、元の契約と設計どおりに実現する案です。どの追加対応で可能か、責任者が技術と契約の両面で確認します。施工上無理なことを強行させる意味ではありません。根拠のある方法で約束を実行できるかを確かめる案です。
第二案は、目的を満たす代替案へ変える方法です。例えば棚の位置そのものより、使う物へ手が届くことが目的なら、別の配置で解決する場合があります。ただし価格、見た目、使い勝手、保証、工期で何が変わるかを並べ、施主が納得して承認します。
第三案は、影響する部分の施工を保留して確認する方法です。全工事を無条件に止めるのではなく、後で直しにくくなる部位を責任者と特定します。安全や養生を確保し、確認期限とその間に進められる作業を相談します。結論がないまま仕上げで隠れないことが重要です。
6|費用と日程を、別々に承認しない
仮例として変更差額が3万円でも、既存仕上げの復旧4万円と部材の再手配2万円が必要なら計9万円です。これは相場ではありません。見た目の変更部分だけでは全費用が分からないことを示しています。どの作業が既に終わり、何をやり直すかを内訳で確認します。
工期への影響も、材料納期、設計確認、関連職種の再手配を分けて聞きます。「難しいから延びます」ではなく、どの条件が決まれば何日に見通せるかを説明してもらいます。新しい工期と費用を同時に確認し、生活側の仮住まいや引越しへの影響も整理してください。
7|記録に残す四つの欄
「現在の契約内容」「現場で判明した条件」「会社の提案と根拠」「施主が承認した範囲」を分けます。これに日付と担当者、未決事項の期限を付ければ、後から見返しやすくなります。会議の感想だけではなく、施工へ渡す決定が分かる記録を作ります。
返答が口頭であった場合は、内容をまとめて確認を求めます。未確認事項を含むメールに一括で了解と返さず、承認と保留を分けてください。担当者の言葉を自分に都合よく書き換えるのでもなく、認識が違う点を具体的に示して調整します。
8|会社が回答をまとめない場合
同じ質問に何度も答えが変わる、責任者が示されない、理由を説明せず施工を進める場合は、会社の責任ある窓口へ文書で確認を求めます。契約書、図面、変更記録、写真、やり取りを整理し、必要に応じて住まいるダイヤルや弁護士・建築士等へ相談します。[R17]
施主が怒鳴って作業を止める、職人へ独断で追加費を払う、ネットに断片だけを出して責任を決めるといった方法は、問題の整理を難しくすることがあります。正当な質問をすることと、無理な現場指示をすることを分け、根拠のある回答を求めてください。
回答が変わった理由まで、引き継ぐ資料に残す
最終的に施工できることになった場合も、なぜ最初は難しいと言われたのかを記録します。情報の不足、図面の違い、下地や設備の追加など、理由が分かれば次の担当者が同じ疑問を繰り返さずに済みます。単にできるに変わったという結論だけでは、必要な前提が落ちる可能性があります。
代替案を採用する場合は、施主が諦めた条件と維持する条件を明記します。例えば位置は変えるが収納量は維持する、品番は変えるが掃除性と保証は確認するなど、目的を残して判断します。変更したという一文だけで、元の希望まで消えないようにします。
工事が再開する前に、現場へ同じ図面と仕様が届いたかを責任者へ確認します。営業から施主への説明が済んでも、発注や施工へ反映されていなければ問題は残ります。誰がいつ共有したか、未回答の事項が残っていないかを確認してください。
担当者同士の責任の押し付け合いに施主が巻き込まれた場合は、会社の責任ある窓口へ整理を求めます。施主は社内の調整を代行する立場ではありません。希望と疑問を伝え、会社として根拠のある回答と実行を受け取る立場であることを忘れないでください。
9|確認する五項目
① 「できる」が技術・費用・工期のどの意味かを分けたか。曖昧な言葉だけで争いません。
② 同じ図面の版と承認済みの仕様で話しているか。検討案と施工図を混同しません。
③ 営業・設計・現場の回答を会社の窓口へ集約したか。施主が伝言係になり続けません。
④ 元の案と代替案の品質・費用・工期を比較したか。説明不足のまま変更を承認しません。
⑤ 決定・保留・責任者・確認期限を記録したか。後で隠れる施工を未確認のまま進めません。
10|そのまま使える質問
「営業と現場で回答が違うため、同じ図面と仕様で確認した会社としての回答をお願いします。技術的に難しいのか、契約金額や納期の問題なのかを分け、元の案と代替案の差を説明してください。確認が終わるまで保留する施工箇所と、回答期限も共有したいです」と伝えます。
俺流ポイント|施主を、営業と職人の間の伝言係にしない。会社として一つの答えを出す。
関連Q&A
07-017 現場写真を何百枚撮っても、場所が分からなければ使えない。新築工事で残したい記録の撮り方。
07-018 気になる施工をSNSへ公開する前に。拡散で判断を求めるより、直すための情報をそろえる。
第7集 01-019 議事録に「了解」と返す前に。数万円の差額も、窓の位置も、思い込みで発注させない確認術。
参考・確認先:[R01][R02][R13][R17] | タイトル索引へ戻る










