加害者から修理代を受け取った後でも、自分の保険へ相談してよい?
原案の判断:受取済みの金額と内容を伝え、残る損害の扱いを確認する。
加害者から修理代を受け取った後でも、自分の火災保険へ相談して構いません。ただし、受け取った金額と、何の損害に対する支払いかを必ず伝えてください。残った損害が契約の対象になるか、示談内容が請求や保険会社の権利に影響するかを整理します。同じ修理費を重ねて受け取れるとは考えないことが重要です。
受取済みのお金が何の対価かを明らかにする
振込があったという事実だけでは、全額の弁償なのか、一部の前払いなのか、見舞金なのかが分かりません。相手とのメール、領収書、合意書、振込明細を集め、支払者、金額、日付、対象となる被害を整理しましょう。名称と実態が一致しているかも確認します。
例えば、門の修理と室内の家財に損害があり、相手が門の分だけ支払った場合は、その区分を示します。単に「修理代として受領」とだけ書かれていると、どこまで解決したのかが曖昧になります。曖昧な点は自分の推測で埋めず、当時のやり取りをそのまま提出してください。
口頭で話し合った場合も、話した日時、相手、確認できた内容をメモにします。後から合意書を作るなら、当初の合意と新しい条件を混同しないことが大切です。保険会社への説明に都合よく支払名目を変えることは避けましょう。
事故の補償と賠償の調整を分けて聞く
自分の保険へは、まず今回の原因と被害が補償対象かを照会します。対象事故でなければ、相手の支払いが少ないという理由だけで火災保険が不足を補うわけではありません。対象となる場合も、損害の算定、自己負担、受取済み金額の取扱いを確認します。
賠償では古さを反映した金額で話し合い、自分の保険では別の評価方法を使うなど、算定の前提が違う場合があります。だからといって、その差額が常に支払われるとは限りません。両者が何を基準に金額を決めたかを示して、契約に沿った計算を求めましょう。
保険会社が必要とするのは、相手との関係を悪化させる説明ではなく、誰からどの損害を補ってもらったかという情報です。相手が加入する賠償保険の担当窓口も分かれば伝えます。同じ事故について窓口間で確認できるよう、事故受付番号を控えてください。
示談書で放棄した権利がないか確認する
「今後一切請求しない」「本件はすべて解決した」といった文言がある場合は、その書面を保険会社へ必ず見せます。修理代の受領書だけのつもりでも、ほかの損害や追加の請求まで解決した意味を含むことがあります。金額だけで判断しないでください。
保険会社が支払った場合、加害者への損害賠償請求権が一定範囲で保険会社へ移る仕組みがあります。ソニー損保の2025年10月版火災保険約款にも、その規定があります。先に権利を放棄した合意があると影響を確認する必要があるため、署名済みの内容を隠さないことです。
まだ正式な示談をしていないなら、自分の保険会社と相談するまで、追加の請求権を含む最終解決の合意は急がないでください。すでに署名していても、直ちにすべて請求不可と自己判断せず、文言と経緯を示して取扱いを照会します。
残っている被害を費目ごとに整理する
一覧表には、修理箇所、見積額、相手が支払った額、保険会社へ相談する額、未確定の事項を記します。応急修理、本修理、片付け、仮住まいなどを分けると、何がまだ補われていないかを説明しやすくなります。見積もりの改訂日も残してください。
仮に修理見積もりが八十万円で、相手から三十万円を受け取ったとしても、残り五十万円が必ず保険金になるわけではありません。この数字は整理の例であり、対象外工事や自己負担があれば結果は変わります。必要なのは引き算だけでなく、各費目の補償判断です。
すでに修理した場合は、支払いに使った資金が相手からの金銭か自己資金かも記録します。相手が修理会社へ直接払った場合は、その請求書と支払証明を用意します。自分の口座へ入金がないから未受領として扱うことは避けてください。
以後の連絡と精算を一つにまとめる
保険会社へ相談した後に、加害者から追加支払いの提案を受けたら、受領や示談の前に担当者へ連絡します。すでに保険会社が支払っている部分については、誰が受け取り、どう精算するかが問題になります。独断で受け取って使わず、扱いを確認しましょう。
相手に伝える内容は、事故の事実、修理の進捗、保険会社と調整中であることなどに絞り、保険金が必ず出るからもう支払わなくてよい、と約束しないでください。保険の査定と相手の法的責任は同じ手続きではなく、結論が出る順番も異なります。
合意の意味が争いになった場合は、契約先の苦情窓口だけでは解決できないことがあります。弁護士等へ相談するときも、事故資料、受取金の内訳、示談書、保険会社の回答を一緒に示すと論点が明確です。保険会社への請求期限も別に確認し、話し合い中だから安心と放置しないでください。
深澤の判断と次の行動
私なら、受取済みの金銭と示談書を開示したうえで、補償の対象と残る損害を自分の保険会社へ確認します。先にもらったから相談できないと考える必要はありませんが、同じ損害を二重に受け取る前提にもできません。追加の合意をする前に、支払済みの範囲、未解決の損害、権利の扱いをそろえて整理することが、後の精算を簡単にします。
参考資料 確認日 2026年10月25日
ソニー損保 新ネット火災保険 普通保険約款・特約 2025年10月版
関連Q&A
A173 火災保険が二つ重なっていた。事故を両方へ伝えると不利になる?










