Q. なぜ住宅展示場のモデルハウスは大きいのか?
A. 実際の平均的な住宅を再現するためではなく、住宅会社の技術、設備、デザインを一棟で最大限に見せ、複数のお客様を同時に接客するためです。
住宅展示場のモデルハウスへ行くと、広い玄関、大きなLDK、吹抜け、アイランドキッチン、ホテルのような洗面室が並んでいます。
しかし、モデルハウスの広さや設備を、自分たちが実際に建てる住宅の基準にしてはいけません。
モデルハウスは、暮らしをそのまま再現した住宅ではなく、住宅会社の商品を魅力的に見せるための「大型ショールーム」だからです。
重要なのは、モデルハウスの豪華さではありません。
自分たちの予算と広さで、どの仕様・性能・暮らしが実現できるかです。
大きい理由1.一棟で多くの商品を見せるため
住宅会社は、モデルハウス一棟の中で、できるだけ多くの商品や提案を見せたいと考えます。
- 大きな玄関
- 吹抜け
- アイランドキッチン
- パントリー
- ファミリークローゼット
- ランドリールーム
- 書斎
- 和室
- 子ども部屋
- 二世帯住宅設備
- バルコニー
- 大型収納
- 造作洗面
- 間接照明
これらを一棟に入れると、建物は自然に大きくなります。
しかし、実際の住宅では、家族全員がすべてを必要とするわけではありません。
展示されている設備を全部採用しようとすると、建物面積と総額が大幅に増えます。
2.複数のお客様を同時に接客するため
総合住宅展示場では、一日に何組ものお客様が来場します。
そのため、普通の住宅にはないスペースが設けられています。
- 大人数が入れる玄関
- 商談室
- キッズスペース
- 事務スペース
- スタッフの待機場所
- カタログ収納
- イベントスペース
- 複数組がすれ違える広い廊下
見学者が多くても狭く感じないよう、廊下、階段、LDK、玄関も広くつくられます。
モデルハウスの延床面積が60坪でも、実際の生活部分だけを考えれば、すべてが必要な広さではありません。
住宅ではなく、店舗としての機能も含まれていると考えます。
3.広い方が豪華に見える
同じキッチンや床材でも、広い空間に配置した方が魅力的に見えます。
- 天井が高い
- 窓が大きい
- 家具の間隔が広い
- 通路が広い
- 生活用品が置かれていない
- 照明が計画されている
- インテリアが統一されている
この空間へ入ると、「自分もこんな家に住みたい」と感じます。
しかし、その感情のまま商談を始めると、モデルハウスの広さが頭の中の基準になります。
30坪で十分だった家庭が、35坪、40坪と希望を増やす原因になります。
大きさで建築費はいくら変わる?
仮に建築費を坪75万円として、単純計算します。
| 延床面積 | 建築費の単純計算 |
|---|---|
| 28坪 | 2,100万円 |
| 30坪 | 2,250万円 |
| 35坪 | 2,625万円 |
| 40坪 | 3,000万円 |
| 50坪 | 3,750万円 |
| 60坪 | 4,500万円 |
実際の建築費は、設備、構造、形状、付帯工事などで変わり、坪数へ完全には比例しません。
それでも30坪と40坪では、単純計算で750万円の差になります。
750万円を金利年1.5%、35年返済で借りると、毎月返済は約2万3,000円増え、返済総額は約964万円になります。
モデルハウスを見て10坪広げる判断は、利息を含めて約1,000万円近い差になる可能性があります。
4.最上位の設備を展示するため
モデルハウスには、標準仕様ではなくオプションや上位グレードが使われている場合があります。
- 高級キッチン
- 大型食器洗い乾燥機
- 造作洗面
- 無垢床
- タイル壁
- ハイドア
- 間接照明
- 全館空調
- 大型窓
- 特殊な外壁
- 上位グレードの浴室
- 特注家具
モデルハウスと同じ外観や内装にしたいと希望しても、見積りには含まれていない可能性があります。
モデルハウスでは、気になった設備ごとに次の3つを確認します。
- 標準仕様
- 有料オプション
- 展示専用で採用できない仕様
「この家と同じものはいくらですか」と聞くことが重要です。
5.住宅会社の技術力を印象づけるため
大きな吹抜け、大開口、長い廊下、複雑な屋根などは、住宅会社の設計・施工力を見せる材料になります。
しかし、技術的にできることと、自分たちに必要なことは違います。
大空間や複雑な形状には、次の費用や注意点が増える場合があります。
- 構造補強
- 空調設備
- 断熱・気密施工
- 大型窓
- 照明
- 清掃
- 将来の修繕
- 冷暖房費
モデルハウスで実現できているからといって、予算2,500万円の住宅へ同じ内容を入れられるとは限りません。
6.家具と照明で実際より広く見える
モデルハウスでは、空間を広く見せるためにインテリアが綿密に計画されています。
- 背の低い家具
- 脚の細い家具
- ガラス天板
- 壁と同系色の家具
- 生活用品を置かない
- 大きな鏡
- 間接照明
- 広角で見える視線設計
展示されているソファやダイニングテーブルが、自宅で使う予定の家具より小さい場合もあります。
確認するのは畳数だけではありません。
- 部屋の縦横寸法
- 壁から家具までの距離
- 通路幅
- 天井高
- 窓サイズ
- 収納寸法
- 実際に置く家具のサイズ
モデルハウスの図面を見ながら確認します。
7.生活感を消している
モデルハウスには、実際の生活で必要なものがほとんどありません。
- ゴミ箱
- 掃除機
- 洗濯物
- 冷蔵庫の食品
- 学用品
- 郵便物
- 日用品のストック
- 充電コード
- 冬用寝具
- 季節家電
- 車用品
生活用品がなければ、同じ広さでも大きく美しく見えます。
「収納が十分ありそう」と感じても、実際の荷物が入るかは別です。
家族の持ち物を分類し、収納する場所と必要寸法を確認します。
モデルハウスが悪いわけではない
モデルハウスには、実物を確認できる大きな価値があります。
- キッチンの高さ
- 床材の質感
- 建具の開閉
- 窓の操作
- 浴室の大きさ
- 収納の奥行き
- 照明の明るさ
- 室内の音
- 空調の効き方
- コンセントの位置
問題は、モデルハウスを見ることではありません。
モデルハウスの大きさと豪華さを、自分たちの住宅へそのまま当てはめることです。
見学時には、採用する部分と参考にしない部分を分けます。
見るべきは完成見学会
モデルハウスの次に見るべきなのは、実際のお客様が建てた住宅です。
特に、自分たちの計画に近い住宅を見学します。
- 25~30坪
- 同じ家族人数
- 同じ平屋・2階建て
- 同程度の土地面積
- 同じ予算帯
- 標準仕様中心
- 同じ地域・気候
60坪のモデルハウスを見ても、28坪の平屋の距離感や収納量は分かりません。
実際の建物で、玄関、LDK、寝室、洗面室の広さを体感します。
モデルハウスで性能は分かるのか?
モデルハウスが暖かくても、自分たちが建てる家も暖かいとは限りません。
モデルハウスは、次の条件が違う場合があります。
- 上位の断熱仕様
- 高性能な窓
- 大型空調設備
- 24時間連続運転
- 室温を保つ専任管理
- 標準外の換気設備
- 日中のみの体感
- 人が生活していない
確認するのは体感だけではなく、数値と測定結果です。
- UA値
- 断熱等級
- C値
- 気密測定の有無
- 窓のUw値
- 換気方式
- 暖冷房設備
- 実際の光熱費
「モデルハウスと同じ性能が標準価格に含まれるか」を確認します。
見学時に聞く10の質問
- このモデルハウスは何坪ですか
- 一般的なお客様の平均的な建築坪数は何坪ですか
- この建物を同じ仕様で建てると総額はいくらですか
- 標準仕様とオプションを分けてください
- オプション総額はいくらですか
- 展示専用スペースは何坪ありますか
- 標準仕様の30坪住宅なら総額はいくらですか
- UA値・C値・耐震等級は標準仕様と同じですか
- 実際のお客様の完成住宅を見学できますか
- 土地・付帯工事・外構・諸費用を含む総額はいくらですか
口頭説明だけでなく、標準仕様書と見積書を受け取ります。
モデルハウスに多数のオプションが採用される場合があるため、どこまでが標準か確認することが重要です。TBSハウジング「注文住宅の標準仕様」
自分たちに必要な広さを決める方法
モデルハウスを見る前に、必要な部屋を決めます。
- LDKは何畳必要か
- 寝室は何畳必要か
- 子ども部屋はいつまで使うか
- 和室を何に使うか
- 洗濯物をどこで干すか
- 収納する物は何か
- 廊下をどこまで減らせるか
- 予備室は本当に必要か
現在の住宅で使っている家具と持ち物を測り、図面へ配置します。
「広ければ安心」ではなく、必要な動作が無理なくできる寸法を決めます。
俺流結論
モデルハウスが大きいのは、平均的な家族の生活を再現するためではありません。
複数のお客様を接客し、住宅会社の商品、設備、デザイン、技術力を一棟で最大限に見せるためです。
私なら、60坪のモデルハウスを見て家の広さを決めません。
25~30坪前後の実際の完成住宅を見て、家族の家具、持ち物、動線を図面へ入れます。
広さを増やす前に、耐震等級3、断熱等級6、UA値0.46以下、全棟気密測定、C値0.7以下など、完成後に変更しにくい性能を守ります。
モデルハウスで見るべきなのは、豪華な吹抜けやキッチンではありません。
標準仕様で何が建ち、住み始めるまでの総額がいくらになるのかです。
展示場の夢から逆算するのではなく、家族の返済と暮らしから家を設計する。これが、モデルハウスに惑わされない家づくりです。










