『クレームゼロ』でも、相談の数え方が分からないときは?
『クレームゼロ』という表示は、何をクレームと数えたかが分からなければ、会社比較の確かな根拠にはできません。相談、申出、不具合、補修、法的紛争をどう区別し、誰がどの窓口で受け付け、いつの案件を集計したかを確認してください。ゼロという数字より、困りごとを受け取り、原因を調べ、対応結果を施主と確認する仕組みがあるかを見ることが大切です。
ゼロの対象を一つずつ確認する
会社がいうクレームは、施主からの不満全般なのか、正式な苦情書面が届いた案件なのか、会社が責任を認めた不具合だけなのかを聞きます。営業への相談、現場での手直し依頼、引渡し後の設備不調が含まれるかも確認してください。定義が狭ければ数字が小さくなることはありますが、それだけで意図的に隠しているとは断定できません。何を表す数字かが問題です。
対象期間も必要です。直近一年なのか、創業以来なのか、保証期間中だけなのかで意味が違います。対象棟数が十棟なのか千棟なのか、完成直後の住宅が中心なのか、長期間経過した家まで含むのかも見ます。『ゼロ』という数字は分母や観察期間を省略しやすいため、どれだけの住宅をどれだけの期間確認した結果かを聞くことが重要です。
受付されるまでの経路を見る
相談が営業担当の電話だけに届くのか、会社共通の受付に登録されるのかを確認します。担当者が個人で対応して記録に残さなければ、会社の集計に入らない可能性があります。施主が相談を伝えたことと、会社が受付済みとして管理したことを区別し、受付番号、担当部署、回答の見込みが分かる仕組みを尋ねてください。
連絡方法は電話、メール、アプリなど複数あっても構いませんが、どの経路でも同じ記録へ集約されるかが大切です。担当者が休暇や異動になった場合、別の人が状況を把握できるかを聞きます。二十四時間受付という表示があっても、受信するだけなのか、緊急度を判断して人が対応するのかは別です。受付の便利さと対応の実態を分けて確認します。
施主が強く要求した案件だけを苦情として数える運用では、穏やかに伝えた困りごとが見えなくなることがあります。自分が困ったときに、言い方を強くしなければ対応されない仕組みでは使いにくいはずです。会社が相談の内容と緊急性を基準に整理し、申出の強さだけで扱いを変えないかを、受付方法の説明から確かめてください。
大工や設備業者へ直接伝えた不満が、会社の集計に戻るかも確認します。窓口以外で受けた声が抜けているなら、そのゼロは会社に届いた件数だけを示す可能性があるためです。
解決した相談をゼロと数えていないか聞く
不具合が発生しても補修済みなら件数から外す、施主が納得したらクレーム扱いにしない、といった数え方があるかを確認します。解決できたことには価値がありますが、発生がなかったことと同じではありません。発生件数、対応中の件数、解決した件数を分けると、会社の問題対応力をより具体的に理解できます。
また、補修したことと、症状が解消したことも区別します。季節や天候によって症状が出る場合には、作業直後だけで結果を確認できないことがあります。会社が何をもって完了とし、施主とどのように確認するかを聞いてください。集計上の完了を早くすることより、必要な経過確認まで扱う仕組みがあるかが、入居後の安心につながります。
個人情報を含まない対応例を見せてもらう
他の施主の苦情内容を実名で教えてもらう必要はありません。匿名化した受付票や対応報告の様式、典型的な相談への流れで十分です。受付日、症状、調査内容、担当、対応方法、確認結果がどのように残るかを見ます。『これまで何もありません』という回答だけより、問題が起きた場合の運用を説明できることのほうが判断材料になります。
例を聞く際は、原因が確定する前に施主の使い方と決めつけないか、会社の説明に疑問がある場合の再確認先があるかも確認します。工事、設備メーカー、施主の使用環境が関係する事象では、最初から一社だけで結論が出ないこともあります。誰が関係者を調整し、途中の状況を知らせるかが明確なら、相談が宙に浮きにくくなります。
補修費用の扱いも聞いておきます。初期調査が有料か、保証対象と判断された場合はどう精算するか、追加調査に進む前に承認を取るかなどです。すべて無償で対応するという言葉だけでは、対象外の場合の流れが分かりません。料金と責任の説明が具体的であれば、将来困ったときに問い合わせる判断をしやすくなります。
他社と定義をそろえて比較する
一社のクレーム件数と、別の会社の修理依頼件数は、そのまま比較できません。定義、期間、対象住宅、受付経路が同じかを確かめます。そろわない場合は、件数による順位付けを控え、受付から完了までの仕組みを比較します。数字を公表する会社ほど問題が多いように見えるという逆転を避けるためにも、集計の透明性を評価してください。
消費者庁の比較広告の考え方も、比較条件の公正さを重視しています。施主側は、ゼロという言葉が自分に与えた印象と、実際の定義が一致するかを確認するとよいでしょう。会社の説明で、対象は訴訟だけと分かったなら、日常の不具合がない証拠には使いません。資料を否定するのではなく、その数字が説明できる範囲へ評価を戻します。
自分の相談が届く体制を確かめる
契約前には、自分が不具合や不満を伝える窓口、担当者以外への連絡先、緊急時の対応を確認します。契約後の担当が営業と異なるなら、その引継ぎ方法も聞きます。家族が使いやすい連絡手段か、記録を控えとして残せるかという点も重要です。相談件数の少なさより、困ったときに事実を伝えられる入口を確保してください。
会社からゼロという表示の根拠が示されなくても、施主が不正を立証する作業まで背負う必要はありません。比較材料としての重みを下げ、確認できる運用と契約内容で選びます。必要な説明を繰り返し拒まれるなら、依頼先として合うか再考します。逆に、定義の限界を認め、対応の仕組みを見せる会社は、その透明性を評価できるでしょう。
深澤の判断と次の行動
私なら、『クレームゼロ』を聞いたら定義と受付方法を確認し、件数より対応の流れを見ます。問題が一切起きないと期待するより、相談が記録され、必要な調査と確認が続く会社を選びたいと考えます。良い数字を示す力だけでなく、都合の悪い情報も受け止め、施主が結果を確かめられる体制を評価します。
参考資料 確認日 2026年10月25日
住宅リフォーム・紛争処理支援センター『建築主に説明しておきたいこと』










