「住宅ローンの審査に通ること」と、「教育費や生活資金を守りながら返し続けられること」は、まったく別の問題です。
今回の住宅資金シミュレーションは、夫42歳・妻39歳、13歳と10歳の子どもがいる4人家族を想定した事例です。夫の税込年収は620万円、妻の税込年収は120万円。新築総額3,800万円に対して頭金300万円を支払い、3,500万円の住宅ローンを35年返済で組む計画を検証しました。
結論は、「C:再設計が必要」です。
最大の問題は、住宅ローンの返済額だけではありません。現在の預金600万円から頭金300万円を支払うと、建築後に残る預金は300万円です。本人が最低限残したいと考えている現金400万円を、契約時点で100万円下回ります。
投資資産100万円はありますが、投資資産は価格変動があり、必要なときに同じ金額で換金できるとは限りません。そのため、このシミュレーションでは頭金や生活防衛資金へ自動的に充当していません。
つまり、この計画は住宅ローン以前に、建築後の生活防衛資金が不足します。頭金を減らすか、新築総額そのものを下げる必要があります。
■35年返済では、夫77歳まで住宅ローンが残る
3,500万円を35年間で借り、当初5年間を年1.5%、6年目から10年目を年2.0%、11年目以降を年2.5%として計算すると、毎月返済額は約10万7,000円から始まり、金利上昇後は約11万5,000円、11年目以降は約12万1,000円になります。
繰上返済をしなければ完済年齢は夫77歳です。希望する70歳の時点でも、約935万2,000円の住宅ローンが残ります。
夫は65歳で定年を迎え、その後は年収300万円で70歳まで再雇用される予定です。65歳時点でも約1,510万円の残債があるため、現役時代より収入が下がった状態で、住宅ローン返済を続けなければなりません。
「借りられる金額」と「安全に返せる金額」は違います。金融機関から3,500万円を借りられたとしても、その事実だけでは、70歳まで返し続けられる計画とは判断できません。
■光熱費削減だけでは、70歳完済に届かない
新築後の光熱費は、年間30万円から年間20万円へ下がり、年間10万円の削減が見込まれています。
この年間10万円を専用口座に積み立て、50万円に達するたびに期間短縮型の繰上返済を行った場合でも、完済年齢は夫74歳です。70歳時点で約598万4,000円の残債が残ります。
省エネ住宅による光熱費削減は家計を助けます。しかし、年間10万円の削減だけで、7年間の返済期間超過を解消することはできません。また、光熱費削減額は将来にわたる保証値ではなく、削減分の全額を繰上返済へ回せるとも限りません。
住宅性能や太陽光発電だけで、無理な住宅資金計画を正当化してはいけません。
■建築直後に教育費のピークが重なる
第一子は13歳、第二子は10歳です。これから高校進学や受験が続き、建築直後に教育費のピークが到来します。
文部科学省の学習費総額を年齢相当で当てはめると、現在相当の公立中学校と公立小学校で年間約90万9,000円、今後の公立高校と公立中学校が重なる時期には、年間約113万9,000円が目安になります。
入力された塾・受験費用は年間60万円ですが、文部科学省の学習費総額には学校外活動費が含まれているため、この60万円をさらに二重加算してはいません。
ただし、大学・短大・専門学校の進学費用は、今回の計算に含まれていません。第一子の大学進学は数年後に迫っています。大学進学の方針、自宅通学か一人暮らしか、奨学金を利用するかによって、必要資金は大きく変わります。
教育費が最もかかる時期に、無理な繰上返済を優先するべきではありません。教育費、生活防衛資金、老後資金を確保したうえで、余った資金だけを住宅ローン返済へ回す順番が必要です。
■土地300万円減と外構100万円後施工だけでは足りない
検討中の調整案は、土地価格を300万円下げ、外構工事100万円分を入居後へ回す方法です。
この2つを実行すると、当初の新築総額は3,800万円から3,400万円へ下がります。ただし、外構工事100万円は消える費用ではありません。住宅ローンから外れても、入居後の将来支出として別に確保する必要があります。
目標とする総額3,300万円にするには、さらに100万円の減額が必要です。建物面積を2坪減らす案もありますが、坪単価や減額見積りが入力されていないため、「2坪減らせば100万円下がる」とは計算していません。実際の見積書で確認する必要があります。
■推奨は「総額3,300万円・借入3,100万円・28年返済」
今回のおすすめ案は、新築総額を3,300万円まで下げ、頭金を200万円、住宅ローン借入額を3,100万円とする再設計です。
頭金を300万円から200万円へ減らすことで、建築後の預金400万円を確保できます。投資資産100万円も売却せず、現金とは分けて残します。
3,100万円を28年返済にすると、毎月返済額は金利段階に応じて約11万3,000円から約12万4,000円です。返済額は現在案と大きく変わりませんが、夫70歳で通常完済できる計画になります。
ただし、夫婦の年収は税込年収です。税金、社会保険料、教育費、車関連費、固定資産税、火災保険、修繕費などを支払った後に、この返済額を継続できるかは、手取り収支での確認が必要です。
本資料は、「住宅ローンをいくら借りられるか」を判定するものではありません。
子どもの教育費を守れるか。建築後も生活防衛資金を残せるか。収入が下がる65歳以降に、多額の住宅ローンを残さないか。その3点から、住宅購入前の一次判断を行うためのシミュレーションです。
住宅会社が提示した月々返済額だけを見て、契約を急いではいけません。家を建てることが目的ではなく、建てた後も家族が安心して暮らし続けられることが目的です。
新築総額3,800万円の現計画と、総額3,300万円へ見直した場合で、建築後の現金、毎月返済額、完済年齢、70歳時点の残債がどのように変わるのか。全14ページのシミュレーション資料で、具体的な数字をご確認ください。
デザインハウス甲府では、建物価格だけではなく、土地、付帯工事、外構、登記、諸費用まで含めた総額を確認し、「借りられる住宅ローン」ではなく、「教育費と生活資金を守りながら返せる住宅ローン」を重視しています。
























