今回のモデルは、夫45歳・年収650万円、妻43歳・年収180万円、子ども15歳と12歳の4人家族です。世帯年収は合計830万円ですが、年収は税込であり、税金や社会保険料を引いた手取り収入ではありません。
新築総額は3,600万円。頭金200万円を支払い、住宅ローン3,400万円を30年間で返済します。さらに自動車ローン残高150万円があります。
住宅会社や金融機関が「借りられる」と判断しても、教育費と生活防衛資金を守り、夫70歳までに返し切れるとは限りません。今回の総合判定は、Cの「再設計が必要」です。
入力数値は一致しています
住宅取得費の内訳は次のとおりです。
- 土地代1,100万円
- 土地・造成・地盤関係費200万円
- 建物本体1,950万円
- 付帯・外構・諸費用350万円
- 新築総額3,600万円
総額3,600万円から頭金200万円を引くと、住宅ローン借入額は3,400万円です。入力数値に不一致はありません。
ただし、数値が一致していることと、安全に返済できることは別問題です。今回の問題は、総額の足し算ではなく、返済終了年齢、教育費、現金余力、既存借入が同時に重なることです。
当初返済は月11万7,341円。11年目以降は月13万263円です
借入3,400万円、返済期間30年、元利均等返済、ボーナス返済なしで計算すると、毎月返済額は次のように変わります。
- 当初5年間・年1.5%:月11万7,341円
- 6年目から10年目・年2.0%:月12万4,358円
- 11年目以降・年2.5%:月13万263円
現在家賃は月8万円です。住宅ローンだけでも当初から月3万7,341円増え、11年目以降は月5万263円増えます。
しかも、新築後には固定資産税、火災地震保険、将来の修繕積立が必要です。これらは入力されていないため計算に含めていません。「現在家賃8万円だから、月11万円台の住宅ローンでも払える」という比較だけで契約するのは危険です。
通常返済では75歳完済。70歳でも約734万円残ります
繰上返済を行わない場合の計算結果は、次のとおりです。
- 通常完済年齢:夫75歳
- 総返済額:約4,576.5万円
- 総利息:約1,176.5万円
- 65歳時点残高:約1,381.8万円
- 70歳時点残高:約734.0万円
夫の再雇用収入として入力されているのは70歳までの年収300万円です。70歳以降の収入は未確認なのに、住宅ローンは75歳まで続きます。
妻は夫67歳時点で65歳となり、入力上は退職します。夫67歳から70歳までの世帯税込年収は、夫の再雇用収入300万円だけです。その後の収入は確認できません。
借りられても、返し続けられる計画ではありません。
建築後に残る預金300万円は、最低希望額と同額です
現在の預金は500万円です。頭金200万円を支払うと、建築後に残る預金は300万円です。
最低限残したい現金も300万円なので、差額は0円です。投資資産はなく、親族援助もありません。
さらに、自動車ローン残高150万円があります。この自動車ローンは、完済すると明記されるまで既存借入として扱います。
再設計条件には「自動車ローンを完済してから再判定」とありますが、完済資金の出所が入力されていません。そのため、住宅用の預金から自動的に150万円を差し引いてはいません。
もし現在の預金500万円から、頭金200万円と自動車ローン150万円の両方を支払うと、建築後現金は150万円です。最低希望額300万円を150万円下回ります。
その場合は、住宅ローン以前に建築後の生活防衛資金が不足します。頭金を減らすか、総額を下げる必要があります。
教育費ピークは建築直後から始まります
第一子15歳、第二子12歳のため、年齢基準では第一子の高校相当と第二子の中学校相当が重なります。現在学年は入力されていないため、文部科学省の公立学校の学習費総額を使った年齢基準の参考計算です。
物価上昇率年0.8%を反映すると、最大年は夫47歳・妻45歳で、年間約115.8万円です。現在から第二子18歳までの公立学校の学習費総額は、約529.5万円です。
ただし、大学・短大・専門学校の学費、自宅外通学の家賃や生活費は0円計上です。第一子の大学進学は、住宅取得直後に始まる可能性があります。
入力された塾・受験費用は年間80万円ですが、文部科学省の学習費総額には学習塾などの学校外活動費が含まれています。そのため年間80万円を追加すると二重計上になる可能性があり、本計算では加算していません。受験料や入学準備金は別途確認が必要です。
将来支出は入力額だけで1,100万円です
住宅ローン以外に、次の支出が入力されています。
- 夫55歳:車買替え250万円
- 夫55歳:建物修繕150万円
- 夫65歳:車買替え250万円
- 夫65歳:建物修繕150万円
- 医療予備費300万円
入力額合計は1,100万円です。車と修繕費に物価上昇率年0.8%を反映し、医療予備費は時期未確認のため入力額のままとすると、参考総額は約1,202.3万円です。
建築後預金300万円は生活防衛資金として残すため、これらの将来支出を別口座で積み立てる必要があります。繰上返済より先に、教育費、生活防衛資金、将来支出を確保します。
光熱費削減10万円を全額使っても、70歳完済できません
現在光熱費は年間28万円、新築後予測は年間18万円で、削減見込額は年間10万円です。
年間10万円を専用口座へ積み立て、50万円に達するたびに期間短縮型の繰上返済を行う参考計算では、繰上返済5回、累計250万円となります。
それでも完済は夫72歳11か月ごろで、70歳時点の残高は約431.2万円です。総利息は約1,075.2万円で、通常返済より約101.3万円減りますが、希望完済年齢には届きません。
光熱費削減額は保証値ではありません。年間10万円を全額返済へ回せる前提で、危険な住宅計画を正当化することはできません。
現計画のまま70歳完済する条件
借入3,400万円、30年返済の枠組みを残したまま70歳完済を目指す場合、50万円単位の期間短縮型繰上返済を行うために必要な積立額は、月約2万200円です。繰上返済累計は約600万円となる参考計算です。
一時繰上返済で対応する場合は、50万円単位で500万円が目安です。
しかし、建築後預金は最低希望額と同額で、大学費用も未計上です。教育費ピーク中に月約2万円を追加で返済することも、500万円を一時返済することも推奨しません。
必要なのは、無理な繰上返済ではなく、住宅総額と返済期間の再設計です。
土地300万円減と外構100万円後施工だけでは、まだ100万円足りません
現在の総額3,600万円から、土地価格を300万円下げると総額3,300万円です。さらに外構100万円を後施工にすると、当初総額は3,200万円になります。
再設計条件は3,100万円以下なので、さらに100万円の調整が必要です。土地を追加で100万円下げるのか、建物や付帯費用を見直すのかは、入力がないため決めません。
外構100万円は、当初借入から外れても消える費用ではありません。将来の現金支出として残ります。
総額3,100万円に下げても、30年返済のままでは75歳完済です
総額3,100万円、頭金200万円なら、住宅ローンは2,900万円です。当初返済額は月10万85円まで下がります。
しかし、返済期間を30年のままにすると、完済年齢は75歳のままです。70歳時点でも約626.0万円が残ります。
総額を下げるだけでは、返済終了年齢は変わりません。70歳完済には、返済期間を25年へ変更する必要があります。
推奨案A:総額3,100万円・借入2,900万円・25年返済
自動車ローン150万円の完済資金を、住宅用預金とは別に確保できる場合の推奨案です。
- 新築総額:3,100万円
- 頭金:200万円
- 住宅ローン:2,900万円
- 返済期間:25年
- 当初返済額:月11万5,982円
- 6年目から:月12万1,591円
- 11年目以降:月12万5,990円
- 完済年齢:夫70歳
- 総利息:約793.2万円
現計画の当初返済額月11万7,341円より低い水準で、完済を75歳から70歳へ前倒しできます。
推奨案B:預金から自動車ローンを完済する場合
自動車ローン150万円を現在の預金から完済する場合、頭金200万円も支払うと生活防衛資金が不足します。
最低現金300万円を残すには、頭金を50万円まで下げる案があります。
- 預金500万円 − 自動車ローン150万円 − 頭金50万円
- 建築後に残る預金:300万円
- 新築総額:3,100万円
- 住宅ローン:3,050万円
- 返済期間:25年
- 当初返済額:月12万1,981円
- 完済年齢:夫70歳
手元現金は守れますが、借入額と毎月返済額が増えます。税金・社会保険料控除後の手取り収支を確認しないまま、この案を採用することはできません。
3つの返済案の結論
第1案の繰上返済なしでは、夫75歳完済、70歳残高約734万円です。
第2案の光熱費削減分を全額返済では、夫72歳11か月ごろ完済で、70歳完済には届きません。
第3案は、総額3,100万円以下、借入2,900万円、25年返済へ再設計する案です。自動車ローンの完済資金が預金から出る場合は、頭金50万円・借入3,050万円案と比較します。
おすすめは第3案です。教育費ピーク中に無理な繰上返済を約束するのではなく、契約前に総額と返済期間を下げます。
なぜBではなくCなのか
条件を少し変えるだけで進められるBではなく、住宅総額と返済期間を同時に見直す必要があるためC判定です。
- 通常完済が75歳で、希望年齢を5年超える
- 70歳時点でも約734万円残る
- 光熱費削減だけでは70歳完済できない
- 建築後預金300万円が最低希望額と同額
- 自動車ローン150万円の完済資金が未確認
- 教育費ピークが建築直後で、大学費用が0円計上
この状態で融資可能額だけを見て契約することは推奨しません。
契約前に固定する6項目
- 土地価格を300万円以上下げる
- 外構100万円分を当初借入から外し、将来支出として確保する
- さらに100万円をどの項目で下げるか見積りで確定する
- 自動車ローン150万円の完済資金の出所を確定する
- 住宅ローンを30年ではなく25年で比較する
- 大学進学資金を確認するまで繰上返済を行わない
最終結論
現計画の新築総額3,600万円・借入3,400万円・30年返済は、夫70歳までに完済できません。光熱費削減だけでも不足します。
借りられても、返し続けられる計画ではありません。
再設計の基準は、新築総額3,100万円以下、住宅ローン2,900万円、返済期間25年です。ただし、自動車ローンを預金から完済する場合は、頭金を減らし、生活防衛資金300万円を残す案との比較が必要です。
デザインハウス甲府の住宅資金シミュレーションは、住宅ローンを通すための資料ではありません。家を建てた後も、教育費、生活防衛資金、老後資金を守りながら返済を続けられるかを確認するための一次判断です。
※本資料は概算・暫定計算です。金融機関の融資承認や将来の収支を保証するものではありません。退職金・年金・大学費用・手取り収入・自動車ローン完済資金の出所は未確認または未計上です。
教育費の出典
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」令和8年1月16日訂正版
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_d




















