「月々8万円台なら払える」で、50年ローンを選んではいけません
今回のモデルは、夫30歳・年収400万円、妻28歳・年収0円、子ども3歳と1歳の4人家族です。
新築総額は3,600万円。頭金は0円で、住宅ローン3,600万円を50年間で返済します。さらに自動車ローン残高250万円があります。
当初の住宅ローン返済額は月8万5,322円です。現在家賃7万円との差は月1万5,322円なので、一見すると購入できそうに見えます。
しかし、この計画の通常完済年齢は夫80歳です。希望する70歳時点でも約1,087万円が残ります。月額を低く見せるために返済期間を50年へ延ばしても、借金が小さくなるわけではありません。
今回の総合判定は、Dの「現時点では見送り」です。
入力数値は一致しています
住宅取得費の内訳は次のとおりです。
- 土地代1,000万円
- 土地・造成等200万円
- 建物本体2,050万円
- 付帯・外構・諸費用350万円
- 新築総額3,600万円
合計は3,600万円です。頭金は0円なので、住宅ローン借入額も3,600万円です。入力上の不一致や、足し算の誤りはありません。
問題は総額計算ではなく、収入、生活費、既存借入、教育費、返済終了年齢の組合せです。
住宅購入以前に、現在の家計収支を確認する必要があります
入力された支出を、それぞれ別の支出として単純合計すると次のようになります。
- 基本生活費:月23万円、年間276万円
- 現在家賃:月7万円、年間84万円
- 車関連費:年間80万円
- 保険料:年間30万円
- 現在光熱費:年間26万円
- 習い事:年間20万円
- 合計:約516万円
夫の税込年収は400万円、妻の年収は0円です。入力項目に重複がない前提では、税金や社会保険料を差し引く前でも、年間支出が税込年収を約116万円上回ります。
基本生活費23万円に、車、保険、光熱費、習い事の一部が含まれている可能性はあります。しかし内訳は未確認です。重複していると勝手に推測して支出を減らすことはできません。
まず必要なのは住宅ローン審査ではなく、現在の家計簿を使った支出の再確認です。
妻の将来収入は0円のまま計算します
妻は現在年収0円で、フルタイム勤務の予定は未確認です。
将来働く可能性があっても、金額と開始時期が入力されていない以上、住宅ローン返済原資には使いません。「子どもが大きくなれば妻が働くはず」という期待で3,600万円を借りることはできません。
夫の年収上昇率、65歳以降の再雇用収入、退職金、年金も未確認です。入力されていない収入は、すべて計算に含めていません。
建築後の預金150万円には、1円も余裕がありません
現在の預金は150万円です。頭金は0円なので、建築後に残る預金も150万円です。
建築後に最低限残したい現金も150万円なので、差額は0円です。投資資産も親族援助もありません。
さらに、自動車ローン残高250万円があります。再設計条件には「自動車ローンを整理する」とありますが、完済資金の出所は入力されていません。
預金150万円から自動車ローン250万円を完済することはできません。単純計算では100万円不足し、さらに生活防衛資金150万円を残すには合計250万円の追加資金が必要です。
住宅ローン以前に、建築後の生活防衛資金が不足します。頭金を減らす余地はないため、既存借入を整理し、現金を増やし、住宅総額を下げる必要があります。
50年返済の総利息は約2,395.6万円です
住宅ローン3,600万円を50年返済した場合の毎月返済額は、次のように変わります。
- 当初5年間・年1.5%:月8万5,322円
- 6年目から10年目・年2.0%:月9万4,104円
- 11年目以降・年2.5%:月10万2,479円
通常返済の総返済額は約5,995.6万円、総利息は約2,395.6万円です。借入額3,600万円に対し、利息だけで約2,400万円に近い支払いとなります。
現在家賃との差は当初月1万5,322円ですが、11年目以降は月3万2,479円です。さらに固定資産税、火災地震保険、修繕積立が必要です。これらは入力がないため計算に含めていません。
70歳でも約1,087万円、65歳では約1,537万円残ります
繰上返済をしない場合の主な残高は次のとおりです。
- 40歳:約3,108万円
- 50歳:約2,594万円
- 60歳:約1,934万円
- 65歳:約1,537万円
- 70歳:約1,087万円
- 75歳:約577万円
- 80歳:0円
夫は65歳定年ですが、再雇用収入、退職金、年金は未確認です。65歳時点で約1,537万円、70歳時点でも約1,087万円の住宅ローンが残る計画を、安全とは判定できません。
光熱費削減9万円を全額使っても、70歳完済できません
現在光熱費は年間26万円、新築後予測は年間17万円で、削減見込額は年間9万円です。
年間9万円を積み立て、50万円に達するたびに期間短縮型の繰上返済を行う参考計算では、繰上返済7回、累計350万円となります。
それでも完済は夫74歳8か月ごろです。70歳時点でも約539万円が残ります。総利息は約2,076.8万円で、通常返済より約318.8万円減りますが、希望完済年齢には届きません。
光熱費削減額は保証値ではありません。年間9万円を全額返済へ回せる前提で、この住宅計画を正当化することはできません。
現計画のまま70歳完済するには、追加返済が必要です
借入3,600万円・50年返済のまま70歳完済を目指す参考計算では、月約1万4,700円を積み立て、50万円ごとに繰上返済する必要があります。繰上返済累計は約700万円です。
一時繰上返済で対応する場合は、50万円単位で550万円が目安です。
しかし、建築後預金150万円は最低希望額と同額で、自動車ローン250万円もあります。大学費用も未計上です。月約1万5,000円の追加返済や550万円の一時返済を、現時点で約束することはできません。
教育費は公立高校まででも約1,331.7万円です
子どもは3歳と1歳です。現在学年は入力されていないため、文部科学省の公立学校の学習費総額を使い、年齢基準で幼稚園から高校卒業までを簡易計算しました。
物価上昇率年0.8%を反映すると、現在から第二子18歳までの学習費総額は約1,331.7万円です。
教育費の最大年は夫44歳・妻42歳で、第一子17歳、第二子15歳の高校相当が重なる年です。年間約133.5万円となります。
入力された習い事は年間20万円ですが、文部科学省の学習費総額には学校外活動費が含まれています。そのため二重加算していません。第二子が幼稚園年齢に達する前の習い事適用範囲は未確認です。
大学・短大・専門学校、自宅外通学費は0円計上です。子ども2人の大学費用を加えると、必要資金はさらに増えます。
車買替え、修繕、医療予備費も未確認です
今回、将来の車買替え、建物修繕、医療予備費の金額は入力されていません。勝手な金額は計上していません。
計算に含まれていないから、将来不要という意味ではありません。総額2,800万円へ下げる再設計でも、これらの積立を住宅ローン返済と別に確保する必要があります。
総額2,800万円へ下げても、50年返済のままでは80歳完済です
新築総額を3,600万円から2,800万円へ下げるには、800万円の減額が必要です。土地、建物、付帯工事のどこを下げるかは入力されていないため、内訳は見積り確認が必要です。
総額2,800万円、頭金0円、借入2,800万円を50年返済すると、当初返済額は月6万6,362円まで下がります。
しかし、返済期間が50年なら完済年齢は80歳のままです。総額を下げるだけでは、希望完済年齢を満たしません。
2,800万円を40年返済すれば70歳完済。ただし安全判定ではありません
借入2,800万円を40年返済にすると、当初返済額は月7万7,608円、夫70歳で完済します。総利息は約1,400.7万円です。
返済終了年齢だけを見れば希望条件を満たします。しかし、入力された年間支出約516万円が税込年収400万円を上回る問題、自動車ローン250万円、生活防衛資金の余裕0円は解決していません。
そのため、2,800万円は「安全に返せる金額」ではなく、再計算を始めるための総額目標です。
安全に返せる借入額は、支出の重複を確認し、税引後手取り収入を出し、自動車ローンを整理した後でなければ確定できません。
3つの返済案の結論
第1案の繰上返済なしでは、夫80歳完済、70歳残高約1,087万円です。
第2案の光熱費削減分を全額返済では、夫74歳8か月ごろ完済、70歳残高約539万円です。光熱費削減だけでは70歳完済できません。
第3案は、総額2,800万円・借入2,800万円・40年返済の参考案です。夫70歳で完済しますが、現在の家計収支では安全判定を出せません。
おすすめは、どの返済案かを今すぐ選ぶことではありません。住宅購入をいったん止め、自動車ローンと家計収支を整理してから再判定することです。
なぜCではなくDなのか
総額や返済期間を調整すれば進められるCではなく、現時点では購入を見送るD判定です。
- 入力支出の単純合計が税込年収を約116万円上回る
- 妻の将来収入、夫の昇給、再雇用収入が未確認
- 自動車ローン250万円が預金150万円を上回る
- 建築後預金150万円が最低希望額と同額で余裕0円
- 通常完済80歳、70歳残高約1,087万円
- 光熱費削減だけでは70歳完済できない
- 大学費用と将来支出が未計上
この状態で、住宅ローンが承認されるかどうかを確認する段階ではありません。
再判定前に行う6項目
- 基本生活費23万円の内訳を確認し、重複のない年間支出を作る
- 税金・社会保険料を引いた手取り月収を確認する
- 自動車ローン250万円の完済計画と資金の出所を決める
- 完済後も生活防衛資金150万円を残す
- 新築総額を800万円以上下げ、2,800万円前後で再見積りする
- 妻の就労予定と大学進学資金を、確認できた金額だけ反映する
最終結論
新築総額3,600万円・借入3,600万円・50年返済は、月額だけを見ると家賃に近く見えます。しかし、夫80歳まで返済が続き、70歳時点でも約1,087万円が残ります。
光熱費削減だけでは70歳完済できません。総額2,800万円へ下げても、現在の入力収支では安全に返せるとは判定できません。
借りられても、返し続けられる計画ではありません。
デザインハウス甲府の住宅資金シミュレーションは、住宅ローンを通すための資料ではありません。教育費、生活防衛資金、老後資金を守りながら、返済を続けられるかを契約前に確認するための一次判断です。
※本資料は概算・暫定計算です。金融機関の融資承認や将来の収支を保証するものではありません。妻の将来収入、夫の昇給・再雇用、退職金、年金、大学費用、将来支出は未確認または未計上です。
教育費の出典
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」令和8年1月16日訂正版
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00002.html





















